待つ福祉から、攻めの福祉へ

クロジカはたくさんのステークホルダーに支えられています。ステークホルダーとはクロジカと共に歩んできたカスタマー、パートナー、メンバー、そしてインベスターの皆さまのことです。
私たちはこれからも、皆さまが作る新たなストーリーに力を添えて、共に歩んでいきたいと願っています。インタビューを通して、皆さまのこれまでの、そしてこれからのストーリーを聞かせていただきました。

今回インタビューをしたのは株式会社B.Continue様。クロジカスケジュール管理のカスタマー様です。

「待つ福祉から、攻めの福祉へ」をキャッチコピーとして、障がい者のかたの学びから一般就労まで安心して自立できる環境を作り、一貫してカバー・サポートをされています。

インタビューでは、代表取締役の島野様に、新しい福祉のかたちについて伺いました。障がいを持つかたご本人や、そのご家族に読んでいただきたいのはもちろんですが、「私たちも障がい者雇用をしたいけれど、どうしたらいいの?」という企業のかたにとっても、発見のある内容となっています。

福祉事業への挑戦

── 島野さまのご経歴と、現在どのようなお仕事をされているか教えてください。

社会人ラグビーの選手として福岡の会社に入社した後、現役引退と同時に退社しました。そのときはちょうど携帯電話・PHSが始まった頃で、これからは通信業界ではないかと通信会社に入社し、その後自分で会社を立ち上げました。3年ほど会社の代表をしておりましたが、そこで負債を負って会社を売却しました。

負債が2,000万円ほど残り、サラリーマンの給料では返済が難しい額でした。僕は会社を立ち上げるのが好きなので、それだったら自分で事業をやりながらほかの会社を立ち上げようと、起業して携帯電話・ビジネスフォン・コピー機といった通信機器の販売を始めました。

 

── 通信機器の販売から、なぜ福祉事業を始めようと思いましたか?

当時、僕は営業兼社長としてやっていたのですが、もし僕に何かあったら会社が潰れてしまうような、常に走り続けないといけないビジネスはまずいのではないかと次のビジネスを模索していました。

そして、2年前に知り合いの社長から「福岡は障がい者施設が足りてないからやったらどうだ?」って言われたときに「障がい者は仕事できないだろうから僕はやりません」と断ったことを思い出したんです。

そこで、一回見に行こうと福祉施設に行ったときに、そこで働いてた障がい者のかたたちが僕が思っていたのと180度違ったんです。

そのとき、「『障がい者=働けない』というのは勘違いだった。僕のように勘違いしている方が世の中に山ほどいるのではないか。世の中の人は軽度障がいのかたが山ほどいるということさえ知らない。チャンスかもしれない」と思い事業を始めました。

障がい者のかたの雇用と自立を支えたい

── B.Continueグループさまはどのような組織ですか。事業について教えてください。

当グループでは、障がい者のかたたちの学びから一般就労まで安心して自立できる環境を作って、一貫してカバー・サポートをしています。法人ごとに事業は違いますが、最終的な「障がい者の雇用と自立」という目的に全部つながっています。単体でやっている福祉事業所さんはたくさんありますが、学びから働く場所まで提供できているのはおそらく日本で当グループだけです。

障がいをお持ちのかたのご両親って、「自分たちが死んだときこの子は生きていけるだろうか」と不安なかたがほとんどです。そんなご両親に、「大丈夫ですよ、当社のグループで学ぶところ、住むところ、働くところ、自立する為の働く訓練をする場所も全てあるし、食品工場もあるから食べものも困らない、心配しないでくださいね」と伝えています。

── 障がい者のかたの生活全体を支える事業をしている企業はなかなかないですよね。
貴社の、M&Aを行ってグループ内の企業で障がい者の雇用をするという発想が、とても珍しく素敵だと思いました。そこに至った経緯を教えてください。

福祉施設の目標は障がい者のかたを自立させることです。自立の一番の重要なところは、やはり生きていくためにお金を稼ぐこと。生活できるようにするために就職をさせるのが目標です。

ですが、障がい者雇用をされているような大企業に就職しても、辞めて戻ってくるケースが多いです。福祉を理解している方は少ないため、最初は障がいに配慮されていても、徐々に普通に扱われるようになり、すぐ辞めてしまうためです。

そのため福祉について理解している、福祉グループ傘下の一般企業を作りました。当グループの企業では、手厚く福祉について研修や勉強会を行っているため、障がい者のかたたちは辞めないんです。

当社は障がい者雇用率が20%を超えており、それも発信しています。「私たちも障がい者雇用をしたいけれど、どうしたらいいの?」という企業さんに、「では当社に見学しに来てください」という形を取っています。

── モデルケースにもなっているのですね。しかし実際にM&Aで事業を始めるのはかなり大変だったのではないですか?

M&Aを行って傘下になった会社の元からいるスタッフさんは、やはり最初は障がい者のかたと働くのは難しいのではないかと否定的でした。

しかしすでに2回M&Aを行っていて、きちんとした取り組み、順番を踏まえれば障がい者の人は戦力になるというのは充分わかっています。マニュアルも使いながら、それを中長期的に落とし込んでいきます。実際、売上も生産性も両方上がっています。

── それはすごいですね!これまでの活動で最も印象に残っているエピソードを教えてください。

住むところと働く場所を一か所にした福祉施設の建設を進めていたのですが、建設会社が逃げてしまったことがあり、それは悲しかったですね。

でもそれを機にM&Aを強化して、そこから一気にグループを拡大させて3倍ぐらい大きくなりました。逆境があっても3倍は稼ぐ(笑)。


── それはつらい経験でしたね・・・!でも今までのお話を伺っていても感じましたが、逆境があってもそれを糧にしてそれ以上にモノにするバイタリティーが素晴らしいです。

 

待つ福祉から、攻めの福祉へ

── 「待つ福祉から、攻めの福祉へ」というキャッチコピーに込められた想いを教えてください。

「待つ福祉」というのは「国からの援助をお待ちしております」といった「保守的な福祉」という意味です。よくあるのが「福祉施設で作ったお菓子なので皆さん買ってください」というような「福祉」を前面に出すやり方です。

そうではなくて、積極的な商品販売やサービスを行っていけば、「実は、ここでは障がい者のかたが働いているのですよ」という、逆の発想、つまり「攻めの福祉」ができると思います。そうやって一般企業がライバルと思える戦える企業づくりをしていきたいです。

その「攻めの福祉」を世の中にもどんどん発信していきたいと考えていて、実際に障がい者のかたが働いている様子をYouTubeやブログを使ってこちらからどんどん発信しています。

YouTubeで積極的に発信も

── YouTubeの投稿数も多く、更新頻度もかなり高いですが、投稿は会社としてされているのですか?

撮影、編集、演出と全て一人でやっています(笑)

── ええ!すごいですね!

僕が動画を撮るのは、その場所に行く理由を作るという目的もあります。例えば最近丸福水産が当社のグループになりましたが、僕は魚が少し苦手で知識があまりありません。でもそのままでは良くないので映像を撮って、「これは何の魚?」「これ何になるの?」などと質問するとスタッフとも会話ができるし、自分の知識にもなるので面倒とは全く思いません。

あと、やはり工場というのは常々人手不足なので、当社を知ってもらって面接に来る人達の補足材料になれば、興味を持ってもらえればという目的でも作っていますね。

YouTubeチャンネル:ビーエイトシーグループ TV

 

── 複数事業の立ち上げやYouTube・ブログでの発信など、島野さまは大変精力的に活動されてますよね。その原動力は何ですか?お仕事されていて、どのような瞬間が嬉しいですか?

仕事が趣味で色々なことをやっているからですかね。

ユニクロの柳井会長ではないですが、ビジネスは「一勝九敗」、10個やっても9個は外れます。僕もあらゆることを色々やっていて、結構うまくいっている方ですがそれでもうまくいかないビジネスも何個もあります。それが軌道に乗ったときは嬉しいですね。

 

ライバルは一般企業

── B.Continueグループ様の活動を通して、どのような社会を実現していきたいですか?

障がい者雇用の成功事例ということで、まだ世に発信しきれていないことがたくさんあります。当社の事業の存在価値を全国、海外にも発信していくことで、障がい者雇用が増えていくのではないかと思っております。

「福祉」の枠にとどまらず、あくまでもライバルは一般企業ですので、福祉事業所が見学に来るのではなく、一般の企業が福祉事業所を見学に来るという形を目指してやっています。

 

── 現在の事業は福岡を拠点にされていますが、県外展開は考えられていますか?

県外展開は考えていないです。

福岡を拠点にして県外に発信していき、ほかの企業さんに当社と同じスタイルを県外でやってもらえばいいと思っています。お金がいくらあっても足りないですからね(笑)。

当社に見学に来ていただく機会を増やしていきたいです。

 

嬉しかった言葉

── 最後の質問ですが、利用者さまに言われて嬉しかったことはありますか?

やはり当社のグループで就職するのが目標だと言ってくれる利用者さんも多いですし、今まで仕事をすぐ辞めていたような子が「仕事が楽しくてしょうがない」と言っているのを聞くと嬉しいですね。「楽しい」と言っていただけるのは非常にありがたいです。

── それは嬉しいですね!確かに仕事が楽しいかどうかで生活の楽しさが大きく変わりますよね。B.Continueさまがやられているような、就職した障がい者のかたがきちんと定着できるシステムが多くの企業にも広まっていって欲しいと思います。ありがとうございました。