メンバーを勝たせる、戦略と組織づくり

「責任者になるとチームメンバーを勝たせるために集中してもらいます」

今回は「TOWNのマネジメントの役割」をテーマに、代表取締役の永井さんにインタビューしました。

責任者は具体的に何をしているのか、責任者が失敗した場合どうするのか、責任者とメンバーの関係性など。マネジメントについて深く聞くことで、メンバー各々が「役割分担の認識」を持つことの重要性が分かりました。

「メンバーを勝たせること」が責任者の仕事

── TOWNでは「責任者」とよく使っていますが、どういう意味で使っていますか?

マネジメントをする役割の人を総称して責任者と呼んでいます。他社だと一般的には課長や部長や本部長とか、そのあたりの役割の人がTOWNでは責任者になるかと思います。

── では責任者とは、グレード制度でいうM層(マネジメント層)の人のことですか?

そうですね、ほぼ一致しています。ただM層ではなくL2で責任者をしている人もいます。そうしている理由は、プレイヤーから責任者というのは連続ではないので、その適応期間をとるためです。

プレイヤーとして一生懸命頑張っていたら自然とマネジメントのスキルがつくというわけではなく、責任者をするためにはマネジメントの講習を受けたり勉強をする必要があります。まだM1の期待値までは届いていなくても、今後責任者を担える人材であれば責任者にもチャレンジしてもらいたいので、その連続しない期間を繋げるためにL2でも挑戦できるようにしました。

── なるほど。責任者になると、プレイヤーの時と何が変わるのですか?

簡単にいうと、プレイヤーの時は自分が勝つことに集中しますが、責任者になるとチームメンバーを勝たせるために集中してもらいます。この二つは全く違う視点で、自分自身もリソースの一つだと考えないとマネジメントはできません。なので客観視する力も必要です。

チームメンバーを勝たせるために、責任者には「会社のゴールに向けた戦略立案と、組織構築を実行する責任」があります。戦略立案と組織構築の二つに集約されますが、どちらも考えるだけではなく、最終的に実行することが重要です。

── 戦略立案と組織構築について詳しくお聞きしたいです。戦略立案とは、具体的にどのようなことをするのですか?

戦略立案とは「戦場で負けないリソース配分」を決めることです。リソースとは具体的には人材・情報・資金のことです。どのような人材をどのくらい採用育成するか(人材)、STP分析をしてどのセグメントを狙うか(情報)、どこから調達した資金をどのくらい投入するか(資金)を決定することです。

── なるほど組織構築とは、具体的にどのようなことをするのですか?

組織構築とは「戦場で負けない役割分担」を決めることです。チームのメンバーを比較優位(適材適所)で人材を配置することです。

比較優位というのは、強みや熟練度によるメンバー間の役割分担のことです。例えば同じ営業の中でも新人が勝てる役割と、経験値が高いメンバーが勝てる役割の棲み分けがあると思うので、そういった人材配置です。現場で戦う時は、新人でも成果を出せる配置にしてあげないといけません。

責任者が失敗したら?

── 責任者が「戦略立案と組織構築の実行」をした結果、失敗してしまった時はどうするのですか?

「また失敗しない戦略立案と組織構築を実行する」という責任があるだけです。

経営者が承認している時点で会社の生存が危ぶまれる失敗はないので、責任者は戦略立案と組織構築が失敗しても、また新しく作ってくれればいい。そこで躊躇する暇はありません。「自分が悪い」と思うくらいなら、勝てる戦略をすぐに作りにいく方が責任を全うしています。

だって役員なんて、皆これまでいっぱい失敗してるし(笑)。でもその時に他責にしないで、新しい戦略を立案し続けているから今の立場にいます。

── でも責任者レベルで失敗すると、大きな損失が出るじゃないですか。それでも何回も任せるって、大変じゃないですか?

うん。すごいお金が飛ぶね。

でもそれを繰り返していると、人はちゃんと気づきます。何て言うか…責任者が失敗すると、経営者である僕が責任を負うよね。そのことに気づいてくれる人が現れるから。そういう頭角が出てくると、もう僕自身が直接事業をみていた時よりも、マインドセットができた事業責任者になっています。

だから人の成長って「こういう戦略を立てたらいいですよ」「組織はこうですよ」とか、そうやって手厚く教えるよりも、実際に戦う中で自然と育つと思っています。

意見交換はフラットに

── 責任者とメンバーとの関係性について伺いたいです。責任者が戦略立案と組織構築のための意思決定をしますが、その一方で「意見交換はフラットに」とも言っているのはなぜですか?

戦略立案や組織構築をするには、「チームメンバーの個性」や「現場の情報」を知る必要があるからです。そのためには責任者とメンバーはフラットに意見交換する必要があります。

── 戦略を立てるために、メンバーの個性を知る必要があるのですか?

メンバーがどういう強みを持っていて、どういう弱みを持っているかによって勝ち筋は変わってきます。例えば広報でも、島津さんというメンバーに合わせた戦略があって、マンガ施策をすることにしました。

だけど、もちろん「メンバーがやりたいことだから」というのだけでは、できない時もあります。例えば島津さんが最初から「マンガをやりたい」と言っても、それは違う。そこで勝ち筋が見えてないとやらない。マンガ施策で広報として僕らの勝ち筋がイメージできたから、実行しました。

── 確かに、個性に合わせた戦略を立ててくれて、私は「自分の強みを活かして働けた」と実感しています。

責任者とメンバーの意見交換をフラットにする理由のもう一つ、「現場の情報」を知るためとはどういうことですか?

戦略をメンバーが実行するなかで、現場で予想外の事象が起こることは確実にあります。それは戦略を立てる側からは見えませんが、その情報をもとに別の戦略を考えなくてはいけないタイミングは必ず来ます。そのときに現場の情報量が減ってしまうと、戦略の選択肢を狭めてしまう。だから責任者とメンバーはフラットに情報を共有する必要があります。

── ではメンバーとの意見交換の結果、責任者が最初に決めた戦略が変わることもありますか?

並行してコロコロ変わるというよりも、前に進んでいると変わっていくはずです。例えば島津さんと一緒に広報をやってきた中でもかなりコロコロ変わっているけど、「なんか前進してるな」となっていたよね。

島津さんは「これやってみたけど、こんな感じでした」と僕に意見をくれるよね。その意見をもとに次の勝ち筋を考えると、もっとバージョンアップした戦略が生まれる。だから「変わる」よりも「アップデートしている」の方が近いかもしれません。

── 確かに、たくさんの変更がありました(笑)。でも検証をして改善しながら、ゴールに向かって進んでいく感じもありました。

リーダーシップとメンバーシップ

── 「マネジメントする人/される人」という構造の中で、自分の意見をフラットに言うことが難しいと感じるメンバーもいるのではと思います。

きっとマネジメントの仕方によっては、そういう風に感じさせてしまうことはあるかもしれないね。

それを解消するために、役割分担の認識を責任者とメンバーがお互いに持つと良いんじゃないかと思っています。

── 役割分担の認識?

責任者とメンバーという関係は、単に役割分担です。役割によって「決断するための情報領域が違う」というだけで。

例えば僕はこの会社の中で、経営判断をするために必要な情報を一番持っています。だからメンバーに対して「なんでわかってくれないんだ」と思ってはいけない。当たり前なんだ。メンバーと僕の間に経営判断をするための情報格差は確実にあるから。

反対にメンバーも「なんでその決断をするんだ」ではなく、もちろんわかった上で他の情報があるから、別の決断をしていることを理解する必要があります。

── なるほど。その役割で決断するための情報はその役割の人が一番持っているから、それを認識するのが大事っていう。

そうですね。だけどメンバーに「責任者の決断によって、少しでも成功してきた」という体験がないと、メンバーは付いてきてくれなくなってしまいます。

もちろん小さな成功と失敗を繰り返してはもらうけど、メンバーが小さな成功を全く体験できないとマネジメント力にはなりません。リーダーシップは生まれないんじゃないかな。僕もマネジメントの正解は全然わかってないんだけど、そう思っています。

── では責任者はメンバーに勝ち筋を作って信頼されることが大事で、反対にメンバーも責任者が判断する上で必要な情報だと思ったら、それは伝えようということですね。

そうですね。リーダーシップとメンバーシップが合致する必要があるんじゃないかな。

TOWNではサーバントリーダーシップを大事にしています。責任者はメンバーと目標の認識をしっかりと揃えて、メンバーがそこに到達するまでの差分を埋めるために、相手が仕事しやすいような環境を作るのが仕事です。だから相手が言いやすい環境を作るのも責任者に必要なことです。

反対にメンバーにもメンバーシップが必要です。メンバーシップは、その組織に属して力を発揮する力です。各メンバーが役割を果たすことで、組織全体に貢献すること。だからその意見が、自分の役割を果たすために必要であれば伝えるのも仕事です。

だから責任者もメンバーもお互いに役割分担の認識を持って、リーダーシップとメンバーシップを持つ必要があります。

── インタビューを通して、TOWNでのマネジメントの考え方や、責任者やメンバーの関係性がわかりました。本日はありがとうございました。