企業にとって、自分たちの「伝えたいこと」をお客様にしっかり伝えることは、最も重要な課題のひとつではないでしょうか。商品やサービス、そして会社の魅力が伝わることが、事業成功の最短距離といってもいいかもしれません。
そんな企業の声や想いを形にしているのが、東京・吉祥寺でWebデザインを手掛ける、株式会社イッパイアッテナ(以下、イッパイアッテナ)。コーポレートサイトをはじめ、サービスサイト、ECサイトなどの企画、制作、運用制作を行っている会社です。
イッパイアッテナが掲げているのは「想いを『かたち』に『つくる』をいっしょに。」クライアントの想いをどのようにユーザーに伝えるかを一緒に考え、ともに作り上げていくことが最大の強みです。
では、実際にクライアントの想いを伝えるためにはどのようなことが大事になるのでしょうか?
今回のクロジカサーバー管理のパートナーインタビューでは、株式会社 イッパイアッテナ 代表取締役の春木さんに、「伝えたいことの伝え方」についてお話を聞きました。
さまざまな経験を経て、デザイン会社を設立
── はじめに、春木さんのこれまでのご経歴を教えてください。
私は東京都中野区で生まれて立川国立で育ち、中高一貫の男子校を経てカリフォルニアの大学に進学しました。 卒業後はアパレル関連のショッピングサイトの運営やデザインの仕事に携わっていました。
そこからグループ会社の出版社で編集業務を経験し、転職してITベンチャーでメディア運用や広告運用の業務を行い、25歳で独立しました。
独立後は絵本の事業をはじめ、Facebookのコンサルタント事業、金融や保険系のメディアなどを行う会社を立ち上げて、ある程度軌道に乗せた段階でのバイアウトを行ってきました。そして、今の会社に至ります
── 大学進学の際に海外を選ばれたのですね。カリフォルニアの大学に行こうと思われたのはどのような理由からですか?
いくつか理由はありますが、物書きになりたかったというのが大きいです。
私はもともと物書きを目指していて、色々な賞に応募していました。しかしなかなか上手くいかず行き詰まっていた時期に、劇作家として活躍されている寺山修司さんの『家出のすすめ』という本を読んで、すごく影響を受けました。
本の中には「家出をすべき」とか「大学に行くべきじゃない」などが書かれているのですが、僕は東京出身だったんで、家出の先といえば海外かなと思い、それでカリフォルニアの大学に進学しました。
── 壮大な家出をされたのですね。そこから日本に戻られて、どうしてWebの業界に入ろうと思ったのですか?
出版社に入ったときに、自分の裁量で仕事をする方が性に合っていると思い、フリーライターや作家として活動しているなかで「独立したいな」という思いがふわっと出てきました。
最初は起業ではなくフリーランスになろうと思っていたのですが、ちょうどその頃に、株式会社サムライインキュベートというベンチャーキャピタル会社をされている榊原さんと出会って、「起業するなら応援するよ」と言っていただいたのがきっかけです。
起業した当初は出版に近い絵本の事業を3年やっていて、次に金融系メディアの会社を別のメンバーと一緒に立ち上げました。
その会社を8年ぐらい続けていたなかで、大学からの友人であった共同経営者がYouTuberになりたいということで、解散することになりました。ちなみに彼は今も活躍しています。それで、その時のメンバーを何人か連れて、イッパイアッテナを立ち上げました。
クライアントの潜在的な課題をデザインで解決
── 続いて、貴社の事業内容を教えていただきたいです。
いわゆるデザイン会社という立ち位置ではあるのですが、Webの企画、制作、運用、マーケティングからプロモーションまで一貫してできる会社です。 受託開発やマーケティング、プロモーションをメイン事業としています。また、それとは別にオウンドメディアをいくつか運営していて、情報発信を行っています。
クライアントさんが抱くWebの課題をいかに解決するかを主軸に置いており、広義の意味で「デザイン会社」という言い方をしています。入り口としてはWebサイトの制作とか、リニューアルから入らせていただくことが多いですね。
── 続いて貴社の強みや魅力を教えていただきたいです。
戦略設計や情報設計に強みを持っていて、そこが得意分野だと思います。弊社の理念に「『あいだ』こそデザインする」というものを掲げています。
例えば、ペルソナを細かく設定してターゲットを絞り込んだり、カスタマージャーニーマップを作り込んだりと、誰に向けてどういった課題を解決するのかという中間成果物を可視化できるようにしています。
最終的なデザインに至るまでのプロセスを見える化し、クライアントさんと一緒に見ていくことで、満足度も高く、評価していただくことが多いと思っています。
一方で、社内の情報発信やブランディングにも力を入れています。社員全員がコラムを書いていたり、福利厚生のひとつであるお茶会の制度があったりと、見ていただいたお客様に少しでも弊社を好きになってもらえるような発信を心がけています。それがきっかけでお仕事をいただくことも多いですね。
── サイトを拝見していて、働いてる方々が見えるのがすてきだなと思いました。春木さんがこれまでお客様から言われて嬉しかった言葉を教えてください。
「ちょうどいいWebデザインギャラリー」というメディアを運営しているのですが、いくつかあるデザインギャラリーのサイトの中でも一つひとつユニークなライティングを行っています。
そういったサイトで約1,500件掲載しているのはなかなかないと思うので、デザイナーの方々から「参考にしています」と言っていただき、すごく嬉しく感じています。
「本当に」伝えるべきことを引きだす
── 続いて、春木様にとっての「いいWebサイト」とは、どういうサイトだと思いますか?
ミッションとして「デザインと教養と想像力で世界を正解でイッパイに」を掲げていますが、ユーザーが実際に検索した時に、ほしい情報がちゃんと載っているサイトというのが大切ですね。
あとはクライアントさんが伝えたい情報をしっかりユーザーに伝えられるサイトがいいと思っています。言葉だけではなく、サイトの設計やユーザーの感じ方も含めて、過不足なくサイトや事業で伝えたいことが、キチンと伝わることが大事ですね。
── クライアントの伝えたいことをきちんと伝えるためにどうしたらいいのか、というところにこだわりを持たれているのですね。
そうですね。ビジュアルのデザインとかよりは、課題が何か、それをどう伝えるかというところがやっぱりWebサイトの役割だと思っています。それは今までWeb業界の中で軽視されていたところでもあるんですね。
クライアントさんって、最初は自社の潜在的な課題に気づいてなかったりするんですね。なのでそこをどう深掘りしていくかというところを意識しています。
そこで、打ち合わせも入念に行って、どんなサイトを作りたいかというよりは、どんな課題を抱えてるかというヒアリングにフォーカスしています。そして、クライアントさんとエンドユーザーの間をつなぐ通訳の役割を果たせるよう努めています。
── ありがとうございます。 続いて、「想いを『かたち』に『つくる』をいっしょに。」にという言葉に込められた想いを教えてください。
ただデザインのビジュアルを良くしたいというのはあまりお力になれないので、クライアントさんの想いをどのようにユーザーに伝えるかを一緒に考えて、ともに作り上げていきたいという想いを込めて、この言葉を掲げています。
過去に、ガソリンスタンドの求人で、採用を増やすためにアニメーションや画像を使ってかっこよく見せたいという方針を決めて依頼してくださったクライアントさんがいました。
ですが、背景を詳しくヒアリングしていくと、ターゲットは高校卒業して就職する方だったので、就職する本人よりも親御さんがどう思うかの方が決定する時の要素として大きく、重要だったんです。
そうすると、企業に対する安心感や、福利厚生や制度などをしっかり伝えた方が刺さることがわかってきました。そこで、ターゲット設定やデザインの方向性を変えて訴求を行うことにしたんです。
── 単にクライアントの要望通りに作るのではなく、背景にある課題について一緒に考えたりと、コンサルティングもされているんですね。
そうですね。突き詰めていくと経営戦略まで遡るので、どこまでやるかというのは課題になってきますね。
Web制作の業界全体をより良くしていきたい
── 続いて、貴社のカルチャーを教えていただきたいです。
はい。弊社のような小さい会社では一人ひとりの裁量が大きくなるので、基本的に自分で考えて発信することが大事かなと思っています。
「楽しい会社である一方で、つらい会社でもあります」という話を新しく入社する方にはしています。普通の会社とちょっと違ってさまざまな催し物があったり、社員の誕生日にプレゼントのプレゼンテーションをやってたりするんですね。
これらは実際に楽しいのですが、一方で全体の仕事の総量が減るわけじゃないので、効率的にやっていかないと大変というのはあります。
── 最後に、今後、会社をどのようにしていきたいですか?
そうですね、受託開発は引き続きやっていく予定ですが、今後はフリーランスや副業でWebクリエイターを目指す方の育成にも関わっていきたいと考えています。現在、Web制作のスクールがすごい勢いで増えていて、卒業したらフリーランスになれると思って入る方も多いですが、もちろんそんなこともありません。
そんななかで仕事を見つけていくとなると、下請けの下請けというか、アルバイトとあまり変わらない状況になってしまっていて、正直業界全体があまりいい流れになりません。
ですので、そこを解決するための事業に取り組んでいて、時間や場所にとらわれない働き方のノウハウやコミュニティを提供することで、現状を改善していけたらいいなと思っています。
あとは子会社として、株式会社saisaiというサブスクリプション型のWebサイトの制作サービスをしています。スモールビジネスでサービスを広げていきたい方やコンテンツを作っていきたい方にはぴったりのサービスだと思います。もしそういう方がいらっしゃったら、ぜひ見ていただきたいですね!
── Webサイトを活用して活躍したい人にとって、これ以上にありがたい存在はないのではないでしょうか。貴社の活躍がWeb業界全体をよくされていくのではないかと感じました。この度はありがとうございました。