社会になめらかなビジネスを

「『自分には経営者としての存在価値はないな』と思って。それまで自分が作っていたのは、隣にいるメンバーの負担で成り立つビジネスだったから」

TOWNのミッション・ビジョンについて、代表取締役の永井さんにインタビューしました。

社会になめらかなビジネスを

── ミッションの「社会になめらかなビジネスを」について伺いたいです。この背景にはTOWNの会社としての経験が深く関係していると聞きました。

このミッションにたどり着くまでには、創業してから約10年経っています。

創業時は受託開発をしながら、自分達のサービスを作ろうと色々考えていましたが、なかなか実現できませんでした。受託開発時代は、売上はちゃんとあるしキャッシュも残るけど、常に「受注がなくなったらどうしよう」という不安がありました。そんな焦りから案件を受けすぎてしまい、それによってメンバーを疲弊させてしまって、案件も炎上させてしまいました。

もちろん受託会社でも上手く回すモデルはあったと思います。だけどそこに到達する前に、社内のキャパをオーバーさせてしまった。

── そんな受託開発時代を経て、どのように「社会になめらかなビジネスを」に辿り着いたのですか?

自分には経営者としての存在価値はないな、と思って。自分が作っていたのは、隣にいるメンバーの負担で成り立つビジネスだったから。

「なぜこんなに大変なんだろう?」と考えた時に、メンバーの労働をそのまま提供しているからだと気がつきました。受託開発だと、せっかく開発の知識やノウハウを得ても、次のクライアントで例えば別の言語になると活かせないこともあって。組織として知識やノウハウが蓄積しにくい。

だから労働集約ではなく、知識集約型のビジネスモデルに転換しないといけないと思いました。メンバーがちゃんと個人が強みを発揮して、もちろん過度な負担がなく仕事ができて、そしてステークホルダーに継続的に価値を提供できるっていう。当たり前のことだけど、そのモデルに本当に向き合わないといけないと考えて、サブスクリプションに転換しました。

── なぜサブスクリプションビジネスが、理想のモデルだと考えたのですか?

サブスクリプションのモデルだと、ステークホルダーに安定的に価値を提供できるからです。お客様には継続的に価値を提供し続けられるし、メンバーに対しても労働の切売りではなく、知識を積み重ねて働くことができる。

だから「ステークホルダーに継続的に価値を提供できる仕組み」が大事だと思っています。

── なるほど。転換してどうでした?

やっぱり安定しました。まず残業がなくなるし、売上も積み上がる。「これが社会に認められた持続可能なビジネスモデルなんだな」とすぐに体験できました。

── 世の中にサブスクのビジネスモデルの会社はたくさんありますが、ミッションやビジョンにそれを掲げている会社はほとんどありません。TOWNはその経験があるからこそ掲げているんですね。

「こういうビジネスモデルが社会にあることが、働く側の個人の負担もなくすし、顧客に対しても継続的に価値を作るんだ」と実感したから、ミッションとして「社会になめらかなビジネスを」と掲げました。

最近のスタートアップみたいに、先に社会課題を解決するミッションがまず大きくあって、そこに人が集まって…だったらかっこいいんだけど(笑)。

僕らはもともと「何をするかより、誰とするか」で集まっていて。僕らが解決しているのは、いつも自分達がぶつかった課題です。でも自分達がぶつかったということは、同じようにぶつかる人がいるから、それは社会課題としても取り組めると思います。自分達が当事者なら、等身大の目線もあるし、それが社会への貢献にもなる。

── 確かにTOWNって、最初に解決したい社会課題がありきで人が集まったわけではなく、TOWNに集まった人たちで「どうやって価値を出していくか」を突き詰めていって今の形になってますね。

これはきっと経営の考え方にも影響が出てくると思っています。多くのスタートアップは最初にミッションがあって、そこに投資家が投資して、そのサービスで社会課題が解決できるかにチャレンジする。その挑戦が上手くいかなければ失敗で、上手くいけばすごく伸びる。このように会社を作ること自体が仮説検証のフローになっています。

でも僕らの場合だと、自分達の目の前のことから小さく解決していって、少しずつ階段を登って大きくなって今があります。だからミッションやビジョンの作り方も異なります。

日本を代表するサブスクリプション・テックカンパニーをめざす

── 続いてビジョンについて聞きたいです。TOWNにとって「継続性」という意味でサブスクリプションのビジネスモデルが重要なことは分かりましたが、「テック」という言葉を入れたのはなぜですか?

「なめらかなビジネス」を実現するには、技術が大事だと考えているからです。技術とは広義の意味で使っていて「安定的で持続可能な仕組みを作るために必要な知識」のことだと考えています。

例えば、このインタビュー記事でも技術が使われていると思っています。単に僕が話すのではなくて、島津さんの編集の技術を用いて記事にすることで、より伝わりやすくなるよね。それがコミュニケーションにおける持続可能な仕組み作りに繋がると思うから、だからそれもテックです。

── 「日本を代表する」にしたのはなぜですか?

少しずつステップアップしていく必要があるからです。もちろん「世界を狙わない」とは思っていません。今のゴールを達成したら、また次のゴールを設定します。

少しずつビジョン・ゴール設定は上がっていくものと考えるので、まずは「日本を代表する」というビジョンを掲げています。

── なるほど。TOWNはわらしべ長者のように大きくなる仕組みを用いているから、目指すビジョンも段階を踏んで上がっていくのですね。

私自身もTOWNのメンバーとして「この会社は継続性を前提に勝つ仕組みが整えられているな」と感じていたので、インタビューを通してその理由がわかりました。本日はありがとうございました!