「『素敵でありたい』という気持ちを抱ける時は、平和な時だと思います」
そう話すのは、株式会社佐々木商店(以下、佐々木商店) 執行役員 兼 ブランディングオフィサーの掛川さん。佐々木商店は「『素敵でありたい』を叶える」を理念として、ジェルネイル・マニキュア・化粧品を製造・販売する会社です。
今回のクロジカスケジュール管理のカスタマーインタビューでは、ネイル商品がどのように作られているのか、またブランドの背景にはどのような想いが込められているのかについてお話を伺いました。
さまざまな経験で培った独自のキャリア
── はじめに、掛川さんのご経歴を教えてください。
紆余曲折あったので、経歴をご説明すると長くなってしまいます(笑)。
元々は幼稚園の先生を5年ほどしていましたが、ぎっくり腰になり続けることができなくなりました。半年ほど静養して復帰できるまでに回復しましたが、当時勤めていた幼稚園は4月からしか復帰をすることができませんでした。4月まで半年ほど時間があったので、学生時代にアルバイトをしていたマクドナルドで働こうと面接に行ったところ、契約社員の打診を受け中途入社することになりました。
その後正社員となり、幼稚園の先生時代から勉強していたEQ(心の知能指数)と呼ばれる、感情をうまく扱う能力を活用し、マニュアルだけでなく心を添える接客トレーニングの担当をしていました。
他にも分社化事業の立ち上げに携わったり、ブランディングや業態開発の仕事をしたりと経験を重ねました。その後は自分で会社を立ち上げ、EQを測定し、育てるためのコンテンツを使って企業向けの研修や新しい会社のプロデュースやブランディングを引き受ける事業を始めました。
── 色々なご経験をされているのですね。そんな掛川さんが、佐々木商店様に入社をしたきっかけを教えてください。
代表の佐々木と商工会議所で知り合い、社員さんたちの業績評価制度の設計や、トレーニングという形で携わるようになったことがきっかけです。佐々木商店は元々業務用にジェルネイル等を作る会社だったのですが、「これからより価値があるものを作っていきたい」という意向があったため、本格的に携わろうと2016年に入社をしました。
入社後は業務用の「No nail No life」のブランディングから始め、 後に小売りのブランドも作りましょうということで、「Causette.Joli」(コゼットジョリ)と「Simple day」(シンプルデイ)というブランドを作りました。
「素敵でありたい」を叶える
── 貴社の事業内容を教えてください。
先ほどお話ししたように、弊社には3つのブランドがあります。業務用のジェルネイルやケア用品のラインの「No nail No life」と、一般向けのマニキュアブランドの「Causette.Joli」、そして一般向けのユニセックス化粧品の「Simple day」です。直営店舗も2店舗あります。
弊社の企業理念は「『素敵でありたい』を叶える」です。女性が「素敵でありたい」という気持ちを抱ける時は平和な時だと思います。天災があったり戦争があったりすると、リップを塗りたい、マニキュアを塗りたいと思えなくなってしまうと思うんです。綺麗になりたいな、身につけたいな、と思えることはすごく幸せなことだなと。
弊社の商品が世に求められるということは、平和な世の中であるということだと思うので、これからも平和が続きますようにという願いが込められています。
── 素敵な想いが込められているのですね。各ブランドについて詳しく教えてください。
業務用ラインのNo nail No Lifeでは、問屋さんを通さず商品の販売をすることで、仲介手数料をかけずに高品質のものをお手頃価格で提供できる仕組みを作っています。No nail No LifeにはLUCIAGel(ルチアジェル)という商品がありますが、ルチアとはイタリア語で「優しい光」という意味で、ネイリストさんたちの優しい光になれるようにという意味を込めました。
Causette.Joli(コゼットジョリ)の「Causette」はフランス語の女性人称で「お喋り」、「Joli」は「素敵」という意味があります。フランスではジェルネイルよりも、マニキュアタイプが主流です。乾くのに時間がかかりますが、お茶をしながら乾くのを待つというスタイルで、優雅に美を楽しんでいる姿が素敵だなと思いました。日本人にも、時間に追われずに美を楽しむ時間を作って欲しいと思い「Causette.Joli」というブランド名にしました。
それから、日本人の感性を表現したり、日本の四季の移ろいの瞬間を色にできたらという気持ちで作っているので、大和言葉や花言葉を商品の名前に付けています。
ポップアップイベントなどでお客様とお会いした際に、日本人は自分に自信がない人が多いと感じたことがあります。指を綺麗にすることで、少しでも自信を持てたり、背中を押してあげたりできるのがネイルの凄さだと思います。なので、単なるコスメではなく、人生を共にするアイテムという思いで作っています。
Simple dayは「心に喜びの鼓動(ビート)を」というキャッチコピーがあります。人間は生きてる間ずっと鼓動を打ち続けるので、悲しんでても喜んでても心臓は同じだけど せっかくならポジティブなビートにしたい、そんな思いが込められています。
コロナ流行時、恐怖から手を洗わなくてはいけないと思う方が多かったと思います。そんな時に、恐怖だからではなく、水で流した瞬間ものすごくしっとりする、いい香りだからまた洗いたくなる。洗わなきゃいけないのではなく、洗いたくなるハンドソープを作りたいと思い、商品をリリースしました。商品名も「ありのままの1日」とか「ブラブラして過ごす日」のように、当時絶対にできなかったこと、今までは出来て当たり前だったことを香りの商品名にしています。
── こだわりを持って作られていることが伝わってきます。貴社にはどのような強みや魅力がありますか?
色が強みだと思います。これまでジェルネイルとかマネキュアの世界は、海外に頼んで調色してもらうことが多かったんです。しかし、海外で調色をしてもらっていると絶妙な色の違いが再現できなかったり、色の違いが理解できないということがあって…。そこで、調色を自社でできるように製造場を作って、今はそこで調色職人さんたちが調色をしています。 自社で調色をすることで、本当に絶妙な色の違いを作り分けができるようになりました。
おばあちゃんになっても、長く愛されるブランドに
── 様々な思いや願いが込められているのですね。 1つのマニュキュアが作られ、私たちの手に届くまでの流れを教えてください。
Causette.Joliの商品の色は私が決めているのですが、リリースする1年前の同じ季節に自分が実際に感じたものを作っています。自然って、その時に感じた感覚とか、太陽、空気が一番美しいと思うんです。そう感じている瞬間に考えないと、やっぱり作れないんですよね。思い出して作るということは、なかなか難しいと思っています。
例えば、去年の春に自分が作ろうと感じた花があった場合、その花の持つ花言葉を調べたり、古人がそれを見てどんな歌を歌ってるのかを調べたり。そういうものを感じて、最終的に色と色の組み合わせを考えてベースを作ります。花として綺麗でも、指に乗せた時に馴染まないと綺麗に見せることができません。流れとしては、調色後に色が決定、耐久検査や色が変色しないか等の検査があり、問題がなければリリースとなります。
── 色だけ見ても素敵ですが、その背景にもこだわりがあることを知り、その想いを感じながら使いたいと思いました。
掛川さんがお客様に言われて嬉しかった言葉があれば教えてください。
自社製品を使ってくださるお客様が「綺麗〜」と言ってくださることはもちろんですが、自信と笑顔を取り戻していただいてる瞬間がすごく嬉しいと思っています。
最初はネイルやマニュキュアだけのラインナップだった当社が、ハンドケア系のアイテムも出すようになったのは、お客様と接してる時に「爪は綺麗になったけど手が荒れているから」とか「年だから」という言葉を聞いたことがきっかけです。
ネイルケアやブライトケア、エイジングケア商品を作って、お客様に土台から自分に自信持っていただきたい、喜んでもらいたいという想いで作っていているので、それを使った瞬間に「わ~!綺麗になった!」と思ってもらえることがすごく嬉しいです。
それから、自分が生み出したブランドの名前を覚えてくれていて、好きだと言ってくれてること自体、奇跡だと思っています。「好きと思ってくれて、出会ってくれてありがとう」と思うし、その奇跡が本当に嬉しいんです。
── 最後に、今後どのようなブランドにしていきたいですか?
シャネルさんみたいな、おばあちゃんになっても「若い時からこれ使ってるのよ」と言ってもらえるようなブランドにしていくことが理想です。
自分が引退してももっと若い世代や、今いる社員たちの子どもが「これお母さんたちが作ったブランドなんだよ」って言って、その子たちがおばあちゃんになっても、このブランドって昔からあるよねと知ってもらえるブランドにしていきたいです。そうなっているということは、ずっと平和であるということでもあると思うんですよね。そういう風にずっと存続しててほしいと願っています。
── 商品化されるまでの過程や想いを知り、これからの新作アイテムがより楽しみになりました。ありがとうございました。