「本質を見失わず、変化し続ける」
今の時代に大切な考え方ですが、同時に両立させることは難しい課題でもあります。
今回インタビューしたのは株式会社テックビルケア様。クロジカスケジュール管理のカスタマー様です。
他社との差別化の難しいビルのメンテナンス領域においてもサービスに付加価値を持たせ、社員の皆様も生き生きと活気に満ちて働かれています。
2009年に2代目代表として就任された茶橋様は、先代が大切にしていた理念をしっかりと受け継ぎながら、新しい価値観や方法を取り入れ、会社の業績を大きく伸ばしています。茶橋様のお話からは、重要なことは実はシンプルなことであるというヒントが得られます。
目次
留学やエンジニアリングを経験して家業へ
── 茶橋さまのご経歴について教えてください。
高校生の時にはニュージーランドで1年間の留学を経験し、大学では電気工学を学びました。将来的に家業を継ぎたいという思いはありましたが、卒業後はひとまず自分が好きなソフトウェアの会社に就職しました。その後エアコンメーカーのサービスエンジニアを経験したのちに防災設備の会社に転職して、退職後に家業に戻りました。
── 留学やエンジニアリングなど、多様なご経験をされているのですね!テックビルケア様の会社の歴史も教えてください。
会社としては、現在は会長職に退いている父が清掃の会社を創業したのが1979年です。1984年に現在本社のある大阪府摂津市に移転しました。
このときはちょうどバブル時代で、時代に乗って会社も大きく成長し、1991年に現在のメイン事業となるビル設備メンテナンスを専門にする別会社を父が創業しました。
2009年に私が家業に戻ったときに、清掃の会社と設備系メンテナンス会社を合併して、現在の「株式会社テックビルケア」になりました。私の入社と同時に消防設備系の事業展開にも本腰を入れ、2014年には東京に事務所を構えました。そして2019年に私が代表に就任しました。
ネット集客の先取りで、事業拡大に成功
── もともと清掃業をメインにされていたようですが、なぜ設備事業も始められたのですか。
父の考えですが、清掃業は超労働集約型の仕事なので、ビジネスとして成り立たせるために人件費を削るなど薄利多売の仕事になってしまう。今後会社を成長させるためには、清掃業だけだとそのうち行き詰まるのではないかというのが一点です。
あとは建物内の清掃事業をやっていくなかで、お客様から清掃以外で「これもできないか」といった声がけがあり、せっかく頼ってくれるのであれば、それもやっていこうかといった形です。この二点で、設備系にも進出しようと思ったようです。
私が2009年に家業の会社に戻ってきたときは清掃の売り上げが8割ぐらいを占めていましたね。そこから私が色々営業をおこなって、急激に消防設備系事業の売り上げ割合を増やしていきました。
── どうやってそんなに売上を伸ばしたのですか?
従来の外回り営業ではなく、「ネット集客」です。今でこそ当たり前ですが、当時はインターネット集客なんて他社さんではほとんどやっていませんでした。
私には1社目のソフトウェア会社で得たインターネットやパソコン関係の知識があったのでそこに目をつけて、毎日パソコンで自分でホームページを作ったりリスティング広告をやったりしました。
そのおかげで、10年以上ほぼ右肩上がりで売上を伸ばしてきました。
── それまでの経験を活かして、新しい知識で会社の売り上げを伸ばしたのは素晴らしいですね!
建物の健康診断をトータルサポート
── 貴社の事業内容について教えてください。
一つ目は消防法に基づく消防設備点検・工事です。売上の大部分を占める、我々の屋台骨になっているのがこの消防設備関連の点検です。必ず半年に1回、1年に1回やらないといけないと法律で決められているので、ビジネスとしてもすごくメリットがあります。
二つ目が、建築基準法12条に定められている「12条点検」と呼ばれる定期報告です。
違いが分かりにくいですが、「消防設備点検・工事」は消防法という法律に基づいたもので、消火器や火災報知機など消防設備のチェックに特化しています。「12条点検」は建物の健康診断のようなもので、建物の外壁とか屋上、廊下などの建物全体を広く浅くチェックをして報告書を作るといった感じです。
火災や地震などの災害が起きたときに安全に避難できるのか、そこを利用している人々の安全が担保されるかという観点は両方とも同じです。
価格も、価格じゃない付加価値も
── 貴社の強みや魅力はどこだと思いますか。
そもそもこの業界は、法律に基づいて点検や調査をおこなっているので、差別化したり付加価値をつけるというのは難しい業界です。
ではどこで他社さんと差別化をするかというと、一つはやはり金額です。
消防設備の点検工事に特化している会社や、定期報告に特化している会社など、それぞれの専門の防災会社は多くありますが、どちらも対応可能な会社は少ないです。両方を一度にできるためコストを削減でき料金も安くできるので、そこが強みです。
── 一度にお願いできるのはコスト減にもなりますし、お客様の手間を減らすこともできてwin-winですね。
もう一つは、価格以外の強みです。当社は社風を良くする取り組みや、挨拶からお客様の対応にフォーカスしてみんなで話し合いながら、価格以外の強みも作っています。
従来この業界は、サービス業というよりもどうしても職人の集まりのようになってしまうんです。現場に出たとき、それは悪い意味でのプライドとして出てしまいます。自分で会社をやるのだったらそこは変えたいと思い取り組んできました。
── 確かに定期的にお願いする会社なので、サービスの受けやすさという視点も大事ですね。お客様に言われて嬉しかった言葉はありますか?
お客様に言われてすごく嬉しかったのは、マンションの理事の方に「いろいろ見積もりを取って、茶橋くんのところが一番安いわけじゃないけども、僕は茶橋くんを理事会で推すよ」と言われたときですね。
チームになって応対したりとか、レスポンスの早さであったりとか「価格じゃない付加価値」を評価していただけたと思います。
── 今回のインタビューにあたり色々なビルメンテナンス企業を調べたのですが、貴社は他社と比較して、どういう人が対応しているのかよくわかる「顔が見える会社」のような印象を受けました。
依頼する側としては安心感がありますが、そこに対して何かこだわりはありますか。
これも従来の業界にありがちなのですが、「僕は現場をやる人」「私は報告書を作る人」といった感じで悪い意味で縦割りになって横の繋がりがあまりなく、顔が見えなかったんですね。
おっしゃる通り当社は横の繋がりも重視しており、「顔が見える会社」というのを実現してきたのだなと逆にこの質問で気が付きました。
大切にしているのは「4つの凡事の徹底」
── 他にもサイトを拝見していると社員の方が生き生きと働いている様子が伺えました。何かそのための取り組みはされていますか?
特別なことは本当にやっていなくて、一番僕が大切にしていたのは「4つの凡事の徹底」です。この4つだけは外せなくて、力を入れています。
一つ目が「あいさつ」です。「よい社風を作る1丁目1番地」と位置づけていますが、お客様への電話対応一つにしても、現場に出た当社の社員のお客様への対応にしても全部ここに出てくるのですごく大事にしています。
次が「朝礼」です。単純に報告連絡だけで終わる朝礼ではなくて、会社の方針・ビジョンを伝えることができる社員教育の1つの機会と捉え、重要な位置づけとしておこなっています。
三つ目は「環境整備」です。「物を整えることにより、心が整う」という考えのもと、当時珍しかったフリーアドレス制を取り入れて、雑然としたオフィスから物を極力少なくして「無駄を徹底的に排除すること」に力を入れました。
最後が「感謝の習慣化」です。サンクスカードを贈り合ったり、当社はSNSのようなものに皆が見ることのできる形で日報を投稿して社員同士やりとりしたりしています。社内でも社外でも何か自分にとって嬉しいことや感謝したいことがあったら日報で書くという文化ができ上がっています。
そういうところから会社の雰囲気や社風、社員の横の繋がりのよさが生まれてきていて、現場の対応品質とかお客様対応、現在の会社の成長に繋がっていると信じています。
── 当たり前のことを当たり前にするのは、なかなか難しいですもんね。
「無駄を徹底的に排除する」ことの大切さもすごくわかります。弊社もオフィスの環境整備を重視しており物がないです。入社したばかりの時は戸惑ったのですが、慣れたらその方が集中できるし雑念が生まれないですね。
そう思います。昭和のオフィスみたいにホワイトボードに行動予定表を書くのではなく、環境整備として色々なものをクラウドにしたいとツールを探しているタイミングでAipo(「クロジカスケジュール管理」の以前の名称)を見つけて導入して、それ以来ずっとクロジカさんを使っています。
他社さんのスケジュール管理も色々試しましたが、シンプルで使いやすかったのでクロジカさんで落ち着きました。
── ありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです!「無駄がなく、シンプルで、社員が業務に集中できる」というのは当社サービスの考え方と非常にマッチしているなと思います。
経営理念を受け継ぎながら、新しいチャレンジも
── 今後会社をどのようにしていきたいですか?
事業としては、今まで我々は建物の調査や消防点検などBtoBでやってきたのですが、今後は一般住宅に向けての住宅調査を新しい事業としてやっていこうと準備を進めています。
あとはドローンを使って、建物の外壁調査をやろうと思っています。ドローンというのは行きづらいところに行けたり普通のカメラだけではなく赤外線カメラを積んだりできるので、インフラや設備の点検にうってつけなんです。
働き方としては、女性が働きやすい環境ですね。現在当社の総務の女性社員5人は全員ママさんです。気兼ねなく休めて、家族のことを優先できるような環境作りを目指しています。
僕の勝手な独断と偏見ですが、やはり女性の社員の人たちが生き生きしてて「この会社って働きやすい会社だよね」と思ってくれる会社はよい会社だと思っています。
皆が「自分自身がこの会社をよくしていこうね」という当事者意識を持って、自走して成長していけるような会社にしていけたらいいなと思います。
── お話を伺ってすごく思ったのですが、茶橋様は2代目の社長として、新しい知識や考え方、ニーズを取り入れて業績を伸ばしておられますよね。先代の「人の繋がりを大事にする」という根本的な考え方を大事にしつつ、新しい考え方や技術でもっと会社を進化させるところが素敵です。
ありがとうございます。僕の大好きな言葉に「不易流行」というのがあります。
おっしゃる通り、先代が作った経営理念などの守っていくものを大事にしつつも、流行はどんどん取り入れながら新しいことをやっていくというところはとても大事だと思っています。
── 茶橋様の「新しいことをするけれど人も大事にする」という経営方針が会社のサイトからも伝わってきます。常にそのビジョンを共有しているので、社員の方々にも伝わっているのでしょうね。本日はありがとうございました。