モノづくりノウハウの継承問題|職人技術の保全と共有は待ったなし

こんにちは。「クロジカ大容量ファイル管理」建設業ライターの東海林です。

モノづくり日本の技術継承に赤信号が灯り始めています。技術者が蓄積してきたモノづくりのノウハウや技術が途絶えれば、モノづくり国家を標榜する日本の産業界にとって大打撃。いかにしてノウハウや技術を次の世代へ継承するかは、技術立国である我が国にとって待ったなしの至上命題となっています。

今回は、ときに芸術とも称される「匠の技」の引継ぎに取り組む動きを各方面で探ってみました。

日本の職人世界

職人芸と伝統

モノづくりに対する執拗なほどのこだわりを持つ日本。職人芸を愛でる文化が育ち、優れた技には芸術に劣らぬ評価と尊敬が集まります。日本ほど職人の世界(職種)が細分化・専門化されている国はなく、職人技術の獲得には修行とも言える鍛錬と長い歳月を要します。こうした「匠の技」はこれまで、日本の産業を広く下支えし、日本企業が世界へ躍進する大きな原動力の一つでした。

例えば、自動車産業における鍛造や金型技術は典型的な職人技です。普段は誰も気にかけないネジやボルトのような小さな部品にも、日本には他国にない優れた熟練工の技術が集積されています。

産業構造の変化

産業構造の変化は職人の世界に大きな変化をもたらしました。古臭いイメージの強い職人の世界へ飛び込もうとする若者が減り、修行のような師弟関係が敬遠される現代では、長い下積みを必要とする熟練工や技術者が育ちにくく、また育てづらくなりました。

例えば、かつての花形産業であった建設業は慢性的な技術者不足に陥り、左官工など技術継承が危機的状況にある職種があります。こうした傾向は製造業全体で深刻化しており、魅力的な労働環境の整備などに各業界があの手この手で躍起になっています。

生産年齢人口

技術継承を妨げている人材不足問題においては、産業構造の変化以上に絶望的な要因があります。生産年齢人口(15〜64歳)の激減です。少子高齢化に歯止めがかからず、このままだと2065年に日本の生産年齢人口はおよそ4500万人まで減少する見通しです。これはピーク時に8000万人を超えていた1990年代と比べて半分近く、2020年との比較でも3000万人に迫る減少が見込まれています。

驚くべき予測としか言いようがありませんが、このままでは確実に起こってしまう目前の未来です。いま2023年ですから、既に2038年までの予測は外れることがありません。
※出典:内閣府『人口減少と少子高齢化』

職人世界への影響

生産年齢人口の減少はすべての産業に影響する問題ですが、日本の高度成長を牽引してきた製造業や建設業などの従来型産業に強く影響が出る傾向があります。こうした産業に共通しているのは、いまの若い世代が魅力を感じなくなっている点です。

まさに熟練工の世界がこの典型であり、「きつい」「つらい」「厳しい」「修行」などのイメージが付きまとう職業ほど若い世代から敬遠される傾向があります。

生産年齢人口の減少から受ける影響は、他の産業と比べて職人世界により暗い影を落としています。

「匠の技」のデータ化


ITの進化がデータ化を可能に

人材不足の解決策としてはこれまで、機械化等による省力化が中心でした。機械の導入は繰り返し作業などの比較的単純な作業を補うには有効ですが、経験豊富な熟練工や優れた技術者に依存しているハイエンド部分をカバーすることが出来ていませんでした。

この問題を先端技術が解決しつつあります。センサー技術やIT技術の進歩により、従来では難しかった技術者の経験や勘の部分をデータ化できるようになってきたからです。

熟練工が手作業で行う「匠の技」をあらゆる角度・諸元からモニタリング解析で数値化し、得られた膨大なデータからAIが最適パターンを抽出します。

優れた左官工や旋盤工などの技能を数値化・映像化して保存することは、「匠の技」を継承するために残された有力な手法になるはずです。

生産技術と職人技術

職人の手や感覚による技術をデータ化することには限界があります。データ化による技術継承の対象となるのは、あくまでも企業の生産活動に要求される高品位レベルまでであり、芸術の域に達しているような特殊な職人の技までもが対象ではありません。継承すべき生産技術と職人技術は必ずしも一致しません。

「匠の技」のなかでも芸術的な技能は生産技術を超えたものであり、産業論とは別にしておく必要があります。そもそもデータ数が限られているので数値化が難しく、仮に数値化できた場合でも技術共有できる人材が限られてしまいます。

最適データの共有化

数値化された熟練工の技術は共有されることで初めて効果を発揮します。最適データを参考にして第三者が技術継承するためには、映像を含めたあらゆるデータを共有し、同じ環境のなかで真似することから始めなければなりません。

さらに大切なことは、技術継承をしていく過程についても細かく共有することです。いかにデータを最適化してもすべての人が熟練工の技術を模倣できるとは考えづらく、継承する人や引き継ぐ方法も最適化させる必要があります。

例えば、引き継ぐ職人の作業(動作)と最適データの誤差をAIに分析させ、動作の誤差と生産物の誤差を照合することも一つの方法です。

デジタル継承がもたらすメリット


職人養成のインフラ

最適化されたデジタルデータがモノづくり職人の師匠役になる未来は、なんとも味気のない世界に感じられるかも知れません。人材不足によるモノづくり技術の途絶を防ぐための苦肉の策ですが、「匠の技」をデータ化する未来は多くの可能性を秘めています。

「匠の技」がデータ化されることにより、誰もがデータの手本となった多くの熟練工の弟子になることができます。しかも師匠は一人ではありません。あまたの匠の最大公約数を学ぶ事が可能となります。引継ぎ過程の最適化が進めば、どのような人物がどの職種に向いているかも分かるようになるでしょう。

これまでのような長い下積みや師弟関係に縛られることなく、誰でも「巧の技」を習得するチャンスが広がり、独り立ちするまでの労働環境が劇的に改善されます。技術をデータ化する取り組みは、技術立国である日本の基盤を強固にするインフラ構築と捉えることが出来ます。

品質の安定と生産性の向上

データがモノづくり職人の師匠となる場合、技術を継承できる弟子の数は無限です。やがて学習する基本テーマや学習法が最適化されますから、一定レベルまでは継承者の技術水準も均一化されるはずです。この場合の一定レベルとは、生産技術として担保されるべきレベルです。これは品質の安定に寄与し、省力化や教育費用の面では生産性の向上に繋がります。

成功例が生む好循環

無機的な近未来の修行に対し、過去のスタイルで技術を体得してきた熟練工や技術者からは反対の声もあがるでしょう。むしろ、厳しい修行をこなしてきた人ほど猛烈な反対派になりがちです。この思考こそが若い世代に敬遠される要因の一つなのですが、職人や技術者の世界は一筋縄では上手く行きません。

この障壁を乗り越えるための特効薬は成功例です。成功例を広く共有することで技術継承の手法や意義に関する認識が深まり、次の課題へ繋げていくことが重要です。

技術のデータ化は職人排除を目指しているのではなく、次の世代の熟練工や技術者を養成するために考えられた現代版のカリキュラムであるとの理解を得るべきです。

教える側も人材不足

経済産業省の調査によると、製造業のうち7割を超える企業が「能力開発や人材育成で問題を抱えている」と回答しています。

その理由の内訳に注目すると、「育成時間の不足」や「鍛えがいのある若手の不足」といった予想通りの理由だけではなく、「指導する側の人材不足」が原因の第1位に挙げられています。すでに教える側の人材も不足している状態にあることが分かります。

現代版カリキュラムに必要な最適化されたデータを作成するためには、できるだけ多くの現役で活躍中の熟練工や技術者の協力が欠かせません。一人でも多くの人に技術を次世代に引き継ぐことの重要さを理解してもらい、政府や関係機関と一体となって協力の輪を拡げるしか道はありません。
出典:経済産業省 『2023年版ものづくり白書』

まとめ

技術者や熟練工の技術継承が産業界にとって待ったなしの問題であることが分かりました。一部の分野では近未来の問題ではなく、既に発生している進行形の問題です。

優れた技術をデータ化することで次世代へ引き継ぐ試みは、モノづくり国家である日本の遺伝子を残す作業でもあります。手本となるデータは今後、ますます精密になり、それにともなって全体の容量は一段と増大することが見込まれます。

こうしたデータを可能な限り広範囲で使いやすく共有化する一方、我が国の優秀な技術の流出や不正アクセスに備える必要があります。

蓄積されるデータを管理するツールとして、クラウドやブロックチェーンの技術がさらに重要になってくると考えられています。

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ライター:東海林

取材記者として約10年、建設会社の経営者及びコンサルタントとして約20年の経験を活かしてライターや企業コンサルとして活動中。幅広い分野への知見を持ち、特に建設業界に関する深い理解や洞察力により実用的な記事執筆を得意とする。

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