「ちゃんと」したWebサイト運用を応援

「ちゃんと作られたサイトを地道に継続して更新していけば、きちんと評価されます」

そう話すのは、「『ちゃんと』したWebサイト運用を応援」と掲げ、WordPress専門のWebサイト制作事業を行っている株式会社エイチツーオー・スペース(以下、エイチツーオー・スペース)の代表取締役 谷口さん。

エイチツーオー・スペースの強みは、お客様が自らの手で育て、自由に使えるサイトを実現できるところ。派手な演出やSEOテクニックに頼るWebサイトも多くありますが、Web標準に基づいてしっかり作られたサイトであれば、アクセシビリティの向上や検索でも上位の表示を目指せます。

今回のクロジカサーバー管理のパートナーインタビューでは「お客様が使いやすい環境を提供できることが価値」と話す谷口さんに、サイト制作で重視していること、また教育事業も行う会社の今後の方向性、そしてWebサイト制作の未来についてお話を聞きました。

Webサイト制作と教育の2本柱を展開

​​── 谷口さんのこれまでのご経歴を教えてください。

私はエイチツーオー・スペースという会社を運営しており、現在で22年目になります。もともとはWebエンジニアとして4年間会社勤めをしていましたが、その後独立し、Webサイト制作の仕事を1人で手がけていました。だんだんと規模が大きくなり制作会社として展開していき、今に至ります。

最近はサイト制作以外にもさまざまな事業に取り組んでいます。教育や動画制作、書籍執筆などを行っており、2018年にはYouTubeの活動や動画教材の販売を別の会社として立ち上げました。

​​── ありがとうございます。独立しようと思ったきっかけを伺いたいです。

学生時代から会社員として働くことにはあまり興味がなく、1人で仕事をすることが好きなタイプでした。小学生の頃からパソコンを使ったゲーム作りに夢中になり、高校生のときには趣味でソフトなどを開発し、当時のインターネット環境でソフトの販売も経験しました。昔から自分で何かを作り上げて発表することが好きだったので、24歳で独立したのも自然な流れだったと思います。

── お若い頃から独立されているのですね!続いて、貴社の事業内容を教えてください。

現在はエイチツーオー・スペースの中で、Webサイト制作と教育関連のビジネスの2つの事業を展開しています。

もともとWebサイトの制作を行っている会社で、私がディレクションやプログラミングを担当し、パートナーの方々にデザインやHTMLの構築などをお願いしています。サイトは私たちが運用するサーバーに乗せ、メンテナンスやサポートも当社で提供しています。お客様のサイトを制作し、運用まで一貫してサポートする総合的なWeb制作会社としての立ち位置が弊社の特徴です。

それに加えて、最近では新たな事業としてクリエイターの育成やDX系の教育にも注力しています。これらの取り組みはYouTubeでの動画制作や、所属している株式会社FunMakeというYouTuber事務所を通じて展開しています。

​​── 売り上げの比率としてはどちらが大きいのですか?

Webサイト制作事業ですね。教育事業は2018年から始まった比較的新しい事業なので、まだまだ伸びしろがあると考えています。今後は、教育事業とWebサイト制作事業の比率を半々ぐらいにしていきたいですね。

── エンジニアの方々は前に出て話すことが少ないというイメージがあったのですが、谷口さんは自らYouTubeなどで積極的に発信されていますよね。

そうですね。根っからのエンジニアというよりも、プログラミングの理解しづらい部分を踏まえた上で、工夫して伝えることが得意なのかもしれません。実は、私はもともとエンジニアというより、ゲームのプランナーを志望してクリエイターの専門学校に通っていたんです。それでゲームを形にするためにプログラミングも学ぶことになったんですね。

当時、プログラミングを学ぶのに非常に苦労した経験があって、その経験をもとにして、本や学校での教育などで情報を共有しはじめたという経緯があります。同じように苦労する人たちから「わかりやすい!」と共感いただくことが多かったため、教育にも力を入れるようになりました。

大事なのは、お客様自身がサイトを育てられること

── WordPress専門で取り組まれている理由について教えて下さい。

私がサイト制作を始めた頃はまだWordPressなどのCMSという考え方が一般的になっておらず、サイトを自分で作る文化は存在していませんでした。すべてプロに任せるのが当たり前という状況のなかで、私としてはお客様が自分でサイトに触れることの重要性を感じていたんですね。なのでCMS(Webサイトのコンテンツ管理システム)の前身である、ニュース更新キットのようなものを販売したり、CMSの導入を進めたりしていました。

18年前くらいから日本ではMovable TypeというCMSが人気になってきたのですが、私は個人的に使いやすいと感じていたWordPressで仕事をしていました。その後、日本でもWordPressの人気が急上昇して、仕事がどんどん増えていったという感じですね。ですので、自然とWordPress専門になりました。

​​── まだ日本で人気がなかった頃から目をつけられていたのですね。続いて、貴社の強みと魅力を教えてください。

うちの場合、綺麗なサイトや派手なアニメーション演出などは得意ではないのですが、強みは技術力やエンジニアリングの分野にあります。私が強く感じているのはお客様が自らサイトを更新できることの重要性なので、お客様がサイトを育て、自由に使えるようにすることをお手伝いするのが、私たちの目指すスタイルです。

制作会社がサイトを抱え込むよりも、お客様に触れてもらい、自ら育ててもらう方が良いと考えています。テクノロジーが進化するなかで、積極的に新しい技術を取り入れ、お客様が自分でサイトを更新しやすい環境を提供できるのは魅力だと思います。私が何か新しいものを作ったりするのが好きだったからこそ、お客様にも同じように自分で作ってもらえる環境を整えたいですね。

​​── 続いて、HPに「『ちゃんと』したサイトを応援する」と書かれていると思いますが、それについて教えていただけますか?

当社が現在のコーポレートテーマとして掲げている「ちゃんとWeb」というキーワードに関連しています。もともと毎年テーマを変えていて、「ちゃんとWeb」は2016年に1年間だけ使われたテーマでした。当時はFlashというアニメーション技術が流行していたため「作り込まれたサイトでなくても派手ならいいよね」という風潮があったんですね。同時にその反動として「Web標準」というものも注目され、Webサイトは標準の技術に基づいて作られるべきだという考え方が広まっていきました。

当社としても派手な演出や悪質なSEOテクニックに頼るのではなく、Web標準に基づいてちゃんとしたサイトを作ればアクセシビリティも向上するし、検索でもしっかりヒットするようになるということを重視しています。なので2016年以降何度かテーマを変えたりもしたのですが、一番しっくりきた「ちゃんとWeb」をコーポレートテーマとして継続することになりました。


お客様に対しても「SEOに強いですよ」とは謳っていないのですが、実際には当社で作ったサイトって結構上位に表示されているんですよ。なので、ちゃんと作られたサイトを地道に継続して更新していけば、サイトはきちんと評価されるということを今後も伝えていきたいですね。

​​── ありがとうございます。Webサイト制作事業について、現在特に注力されていることは何かありますか?

弊社で最近注力しているのがいわゆる「ノーコード」というものです。これまでWebサイト制作は、HTMLやCSSなどを知っている人が触らないとできないというイメージがありましたが、ノーコードはコードを使わずにサイトを作れるというもので、いくつかのツールが登場しています。例えばWixやSTUDIOなどですね。

私たちもそこに乗っかって、お客様自身がサイトのすべてのページに触れるようにしたいと考えています。WixやSTUDIOなどのノーコード専用ツールを使うのではなく、WordPressを使ってノーコードを実現するという方向性で色々と研究しています。

── WordPressでもノーコードでできるんですね!

はい、WordPress自体もノーコードの機能に力を入れてきているんですよ。ただ、私たちは国産のテーマである「Snow Monkey」を使用して、ノーコードに近い手法でいくつかのサイトを提供し始めています。

セキュリティが脆弱で起こるトラブルとは?

── 続いて、サイトのセキュリティについてお伺いしたしたいのですが、セキュリティが脆弱だとどういった問題が発生するのでしょうか?

最近、弊社にも問い合わせがありまして、Googleで自社サイトの名前を検索すると、ないはずのページが検索結果として表示され、そのページをクリックするとまったく別のサイトに転送されるといった症状が報告されました。調査の結果、サイトに侵入されて悪意のあるファイルが追加されていたことが分かりました。

具体的には、侵入されたファイルがオープンリダイレクト攻撃を仕掛け、アクセスしたユーザーを悪意のあるショッピングサイトなどに誘導していたんですね。なのですべてのファイルを一旦捨て、バックアップからデータを戻して正常な状態に戻しましたが、再び侵入されないようにするためには、セキュリティ対策が不可欠です。

セキュリティが脆弱だと、侵入者によって悪意のあるファイルが仕込まれ、リダイレクト攻撃やページの改ざん、削除などの攻撃が行われる可能性があります。サイトの所有者としては、自社サイトが不正な利用や改ざんの被害を受けないよう、十分なセキュリティ対策は必須だと思います。

── そんなことがあるんですね。他にもサイトトラブルで相談に来られるお客様はいらっしゃいますか?

他によくある例としては、WordPressを自分でバージョンアップしようとした際に、アップグレードボタンをクリックした瞬間に画面が真っ白になり、どうしようという相談が結構ありますね。WordPressでは、バージョンアップの際にボタンをクリックしてから、バージョンアップ作業が終わるまで待つ必要があるんです。その途中で閉じてしまったりすると、ファイルが途中で壊れてしまい、画面が真っ白になるという症状が発生します。

── そうなんですね、私も気をつけなければと思いました!

そうですね。バージョンアップの際は事前にちゃんとバックアップを取り、アップグレード中は触らないようにするなど、マニュアルにも書いてありますが、分からないと難しいですよね。ついブラウザを閉じてしまうこともあるかと思います。

目指すのは、教育事業の拡大とWebサイトの「お手伝い」

── 最後の質問ですが、今後どのような会社にしていきたいとお考えですか?

弊社は主にWebサイト制作に従事しており、過去20年ほどは一件のサイトに対して数百万の予算をいただき、制作から納品まで行っていました。しかし、最近ではノーコードのツールが進化してきたこともあり、Webサイトの制作が一般的なスキルとなったため、その価値が変わってきていると感じます。

なので会社としてWebサイト制作の規模は縮小されていくと思っていて、私たちは制作よりも「お手伝いします」という形の存在にシフトしていきたいです。また、教育分野にさらに力を入れ、Webクリエイターの方やビジネスでテクノロジーを活用した業務効率化を目指す方々をサポートしたいと考えています。

──  ご自身がエンジニアであり、わかりやすく伝えることが得意であるからこそ、お客様をサポートするいいコンテンツが生まれるんだろうなと感じました。Web関連のことで困った時には谷口さんのような方にサポートしてもらえたら心強いです。

そういう存在になれたらいいなと思います。これから発売される「Webエンジニアを育てる学校」(たにぐちまこと、マイナビ出版)という書籍も、新たにWeb業界に参入したいという方向けに作っていて、20年以上にわたり培ってきたWeb業界の技術や知識を詰め込んだ一冊です。Web業界の仕事の種類や技術、言語、雇用形態、そしてAIなどのトピックまで紹介しています。

Web業界には非常に広範な知識が求められるため、初めて手を付ける方々は何から始めればよいのか、どこまで学べば良いのか迷うことがあると思います。この本がWeb業界に足を踏み入れたいと思っている方々にとって、手助けになれば嬉しいです。

──  私自身もWeb業界の知識って、まさにどこから手をつけたらいいのか分からないと感じたことがあるので、このような本があれば非常に助かります!本日はありがとうございました。