困り事の解決で、製造業界を元気に

「今まで散々苦労していたことが、この商品を使ったら問題がなくなった」

ものづくりを事業とする企業にとって大切なことは、お客様が求めるものをつくること。そして、みんなの抱える困り事を、技術の力で解決することではないでしょうか?「この商品がなければ、うちの会社は回らない」と言われることは、ものづくりに携わる人々にとって幸せそのものでしょう。

周囲の困りごとや悩みを受け止め、商品開発を行ってヒットを飛ばす企業があります。それが株式会社プラモール精工(以下、プラモール精工)です。この会社はプラスチック射出成形、金型設計・製作、自社製品の製作・販売をしている企業です。

では実際に、困り事を解決して事業を行っていくには、どのようにしていけば良いのでしょうか?今回は、クロジカスケジュール管理のカスタマーインタビューとして、プラモール精工の代表取締役社長の脇山さんに、事業内容やヒット商品「ガストース」の開発秘話などについてお話を聞きました。

困り事に向き合った結果、大ヒット商品が誕生

── まずはじめに、脇山さんのこれまでのご経歴をお伺いしたいです。

私は独立する前に2社経験しています。1社目は金型製作の会社で技術者として金型の製作をしていました。2社目も同様に金型製作の会社でしたが、営業職に配属されてそれからずっと営業を行い、その後に当時の社長から「グループの子会社の面倒をみないか」と誘われて独立しました。今からちょうど40年前の話ですね。

もともと営業をしたいという気持ちは一切ありませんでした。ですが、営業をやっていたから経営もできたんだと思います。現場だけではなく、営業として自分で仕事をとることができるという裏付けがあったからこそ、社長業ができていると自負しています。

── 続いて、プラモール精工さんの事業内容を教えていただきたいです。

金型製作やプラスチック射出成形、金型を使っての成形加工がメインの事業になります。金型にはガスがつきもので、そのガスが金型の中に入るといろんな悪さをするんですね。そういったガスを取り除くような商品を開発し、それを販売しております。

── 貴社のガス焼け・ショート対策のガス抜けピン、「ガストース」はどうやって生まれたのでしょうか?

たまたま、ある金型が品質不良でクレームが起き、その金型がうちに来たんです。うちの方でその金型を使っていましたが、やっぱりいろいろ問題が起きたんですね。改善しようといろいろ試行錯誤した結果、出来上がったのがガストースです。

ガストースを使うことで非常に品質が安定するんですよ。当時はまさにリーマンショックで仕事が半分ぐらいしかなく、同業者はみんな同じ状況でした喜んでもらえるだろうということで、この商品を販売しはじめました。

自分たちが本当に困ってどうしようというところから生まれたのが「ガストース」という商品なんです。やっぱり困っているところから、良い商品が生まれますね。

── 糸引き防止用の「ラジエタースプルー」も同じような経緯で製品化されたのですか?

お客さんにガストースなどを納入していると、お客さんの困りごとがいろいろ出てくるわけですよ。お客さんから「こんなものできないだろうか」とか、いろんなリクエストが届きます。それをヒントに開発したものとなります。

── YouTubeで拝見しましたが、糸引きが見事に改善されていて驚きました。しかも「効果がなければ返金」という品質保証をされているのもすごいと思いました。それだけ自信があるということですね。

そうですね。ラジエタースプルーはどんなものでも問題なく対応できるので、今では材質にこだわらず、どんな材料でもうまくいかなかったら返金します。そのおかげか、あっという間にたくさん売れてリピートも多いんです。「もううちの商品なしでは作業ができない」と言われることもありますね。

最大の強みは「みんなの困り事に応えられる」こと

── 続いて、プラモール精工さんの強みを教えていただきたいです。

やっぱりうちの強みは、皆さんが困っていることに対して解決できる道具を用意できていることです。それを提供できるというところが一番の強みだと思います。

── 貴社商品の売り上げは、何が一番大きいのでしょうか?

ガストースが一番ですね。その次はラジスタースプルーです。同じガストースでもいろんな種類のものがあり、さらなる生産性向上が見込める「スーパーガストース」も生まれました。お客さんの要求に応えていくと種類がどんどん増えていきましたね。

── 商品を使ったお客様からは、どのようなことを言われますか?

自社商品を作ってからは、お客さんから感謝されることがすごく多くなりました。「今まで散々苦労していたものが、この商品を使ったら問題がなくなった」と言われます。

やっぱり人間ってみんな正直ですから、困っているものが解決できると口に出して言うんですよね。そういった瞬間に幸せな仕事をしていると感じます。

── それは確かにとても嬉しいですね。続いて、貴社の商品を使うことによって「工場の無人化」が可能になるということですが、それについてお伺いしたいです。

工場の無人化を阻む大きな要因の一つが「ガス」です。金型に樹脂を流すと、その中にはガスが多く入ってきます。そのガスは隙間から空気と一緒に抜けていきますが、抜ける途中で固まってしまうと隙間が埋まってしまうんです。そして埋まってしまうと中の空気が外に出ていかなくなります。それによって製品不良やチョコ停(製造設備がわずかな時間だけ停止してしまうトラブル)が起きてしまいます。

それを解決するのが、ガストースです。実は弊社の工場はもう夜間は無人でやっています。

ガストースは導入も容易です。金型には必ず製品を抜き出すために突き出しピンというものがあるんですが、ガストースはその突き出しピンと交換するだけなのです。使い方も簡単なので、全国の工場から商品が求められています。

── 貴社ではイベントや勉強会もたくさん行っていますよね。どのような目的で開催されているのでしょうか?

そうですね。いろんな地方に行って商品の説明会をやっています。来た人たちは自分のところとあまりにも差が大きいということで疑うんですよね。本当にそんなことができるのかと疑った顔をする人もいます。

それが悔しいから、弊社では奇数月に工場見学会を行っています。夜中もどういうふうに動いているかを成形機のデータから読み取れるんですよ。それを見て初めて理解してもらえますね。

世界中の「お客様の満足」の実現に向けて

── 続いて、貴社のカルチャーを教えていただきたいです。

私どもの企業理念の中では、「お客様の満足」が大事と謳っています。いかにお客さんに喜んでもらえるか、ですね。喜んでもらうとリピートオーダーも出てくるので、まずはお客様の満足を叶えるべく事業をしています。それが一番ですね。

── 品質保証や勉強会の実施など、お客さんに対して誠実に向き合っているのが伝わりました。最後に、今後はどのような会社にしていきたいですか?

日本の製造業は非常にコストが厳しくて儲かりませんし、仕事が海外に流れてしまっています。ですが、私としては逆に海外から仕事を取ってくるようにしたいんです。

金型製造業の方がうちの商品を上手に使うことで、良い品質の金型を作ることができます。金型を用いて製品を作る成形加工業も、最初の金型代は高いかもしれないけど、長い目で見ると材料費が節約できたり稼働率が良くなります。製品の原価が安くなり、それがずっと続くわけですから、十分金型代の​​採算がとれます。

弊社も儲かるし、金型製造業のお客様も良くなるし、成形加工業の企業も良くなる。そんな三方良しの形を作って、製造業界のみんなを元気にしたいですね。

また、お客様の中には世界中に支店を持っている企業もいるので、そういったお客様とコラボレーションして販路を拡大していきたいと思っています。世界中の方に喜んでもらいたいです。

──「お客様の満足」を第一にして生まれた製品には絶対的な自信があるということがよくわかりました。貴社の製品が世界中に広がることで金型製造業や成形加工業といった、製造業界の皆さんが喜びますね。本日はありがとうございました。